一般社団法人 出雲青年会議所

 
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理事長所信

我(われ)がままに
~私なればこそ、彼なればこそ~ 
            

十九歳の私は、大阪で特に目的もなくフリーターをして過ごしていました。
ある時、自分探しのような軽い気持ちで四国八十八箇所を巡ることを思い立ち、一カ月半の間、寝袋を担ぎ野宿をしながら歩きました。雨に濡れ、風に吹かれ、寒さに震え、日に焼けて、身なりも良くなかったので人から冷たい対応をされながら、毎日毎日歩き続けました。これまでのことも、これからのことも考えず、自分の一歩だけを信じて目的に向かい無心に歩き続ける自分がいました。時に足を止め、迷ったり引き返したりしながらでも最後まで歩いたあの時の景色は、現在の私を形成する原体験として今でも心に強く残っています。
自ら進む道を決め、ひたすらに自分の足で歩みを進めていたあのころの私は、誰よりも自分らしく、「我(われ)がままに」生きていました。

 二十七歳で出雲に帰ってからの私は、毎日目の前の仕事に追われ、そこには歩むべき道も見えず、とても自らの足で立っているとは言えない状態でした。そのような状態のまま、二十九歳で出雲青年会議所に入会した私は、当然苦労の連続でした。周りの評価を気にし、自身の無力さを痛感し途方に暮れた時もありました。それでも今日まで続けてこられたのは、同期のメンバーをはじめ多くの仲間に支えられたからこそです。多くの人に出会い、活動をともにする中で、随所に仲間の熱意と覚悟を感じることがありました。自分自身の過去を振り返り、少しずつ自分と向き合いはじめたとき、人間関係に悩み生きづらさを抱えた自分に気づき、あの当時の「我(われ)がままに」生きていた自分を思い出し、志を立て信念を持って自らの道を切り拓いていく覚悟を決めました。

出雲のまちには、生きづらさを感じながら生活する人が数多く存在します。私が子供の頃と比べ、出雲市も大きく様変わりし、市町村合併を経て、全国チェーンの大型店舗やコンビニエンスストアなどが次々と進出しました。医療技術や情報通信網の発達など、確実に社会全体が発展し人々の暮らしが便利になる一方で、高度に発展していく社会に対応できず、先端技術があふれる社会への順応や他者との関係構築に苦慮しながら生活している人たちもいます。その結果として、出雲市における自死者数をはじめ、関連する生活保護受給世帯数や精神疾患の発症数といった強く相関関係にある分野にも統計的に際立って表れています。生きづらさを感じながら、最終的に自らの命を絶つという選択は不幸としか言えません。出雲市における自死者数は年々減少傾向にはあるものの、未だ全国統計に比べ高い傾向にあります。この背景には経済的、環境的な要因が複合的に作用しているとされ、個人、地域、社会において、生きることの促進要因を増やす取り組みが必要です。自分自身と向き合い、志を立てて理想の自分を描き、本来の自分が持つ素晴らしい個性に気づき、「我(われ)がままに」自分らしく生きてほしいと願います。

様々な課題を抱える一方で、出雲市は多くの人々を惹きつける豊かな地域資源を有し、さらなる発展の可能性を秘めた地域です。この地域に住み暮らす人々が自分らしく生きることができれば、他者の生き方を認めることができ、強い絆が生まれ、さらに魅力的な地域へと発展するための原動力へと昇華していくと信じています。

青年会議所は、明るい豊かな社会を目指した事業を展開し、人の意識や行動を変革します。出雲青年会議所は、先輩諸兄が創立より永きに亘りこのまちの未来に希望を描き、多くの課題に本気で向き合ってこられたからこそ、今日まで続く誇り高き出雲青年会議所の精神が形成されました。連綿と受け継がれる出雲青年会議所のアイデンティティを胸に、自らこそが唯一のよるべきものとして、大いに自身を奮い立たせ、多くの同志と我々の未来を語り合い、ともに歩んでまいりましょう。

我々の本懐である運動を広く地域へ、そして常に地域とともに、我々が活動する出雲において、皆が「我(われ)がままに」生き、互いに尊重し合い豊かに暮らしていけるよう、我々が志を立て覚悟を持って、出雲の明るい豊かな未来を切り拓いてまいりましょう。

私なればこそと「我(われ)がままに」生き、彼なればこそと人を敬い、出雲の輝く未来のために、歩みを進めてまいりましょう。歴史に足跡を残せるのは出雲青年会議所しかないのだから。

《具体的政策》

今後の展望と事業展開

 二〇二〇年度は、二〇一七年度に迎えた創立六〇周年の節目に、中期ビジョン「奏でる出雲 ~Personal to Public~」が策定されてから三年目となります。これまで積み重ねた一つひとつの運動が着実に我々メンバー一人ひとりへの浸透を感じるとともに、地域へ広がっていくことを確信しています。さらなる運動の広がりが加速度を増すためには、出雲の未来に希望を描く多くの仲間とともに運動を展開していかなければなりません。我々自身、これからの未来をともに歩む多くの同志を求め、未来を切り拓く運動を発信し、運動を通じて得る学びを貪欲に求め、さらに自身を高めてまいりましょう。

【修練・奉仕・友情の実践】

青年会議所に入会し、何を得るのか。運動に身を投じ、どのような経験をするのか。すべてはどのような姿勢で青年会議所に向き合うかによって大きく変わってくるのではないでしょうか。デンマークの哲学者、キェルケゴールの哲学の一つ「野鴨の哲学」では、普段は一万二百キロを無着陸連続飛行できる野生の鴨が、人から餌を与えられる安住の地に住み着いた結果、醜く太ってしまい、最終的に飛ぶことも駆けることもできなくなり、増水した川の激流に飲み込まれてしまうという話を残しています。自ら餌を求め、何日間も休むことなく飛び続ける野生の鴨が、飼いならされ飛ぶことすらやめた結果、自然の変化の前になすすべなく滅びていく様を表しています。我々、青年会議所メンバーは、修練、奉仕、友情の三信条のもと、日々の活動において決して妥協することなく一つひとつ突き詰めながら運動を展開し、自身の成長へとつなげていきます。ここに妥協が生まれれば、得られる成長もおのずと少なくなります。青年会議所では、自ら求めれば成長の機会はどこまでも広がっていきます。その成長の機会に安楽を求め妥協することなく、三信条を実践し成長を追い求めましょう。

【出雲の新たな道を切り拓く】

我々青年会議所メンバーは日々、このまちの未来について語り、議論を尽くし、互いが切磋琢磨する中でこれからの道を見出し、自らの成長を得ます。視点をまちに移せば、この出雲においても多くの人が交わる中で様々な価値が生まれ、まちの活力が生まれます。交わりの中でまちの活力が生まれ、その交わりの濃さや規模が大きければ大きいほど、まちの活力が増すと言えます。さらに、そのまちの人々が主体性をもって互いを尊重しつながり合えば、皆が生み出した活力に相乗効果を加え、さらに多くの人々を惹きつけるまちへと発展していきます。出雲の未来を担うのは我々自身です。世界に目を向け、この地域が持つ可能性を我々が押し広げることでまちの未来に希望を描きましょう。そして、自分自身を別の環境におくことで他者の境遇に理解を深め、皆が「我(われ)がままに」互いへの敬いをもってつながりを強めていくことで、「生きることの阻害要因」を減らすとともに「生きることの促進要因」を増やすことにつながります。その先に、皆がこのまちの未来に明るい可能性を抱き、活力にあふれつながり合う出雲へと成長すると信じています。このまちの未来を担う我々が、このまちが持つ新たな可能性に挑戦し、新たな未来を切り拓いてまいりましょう。

組織並びに運営について

【さらなる成長を追い求める】

青年会議所は入会する時期は違えど、四十歳までこのまちの未来を切り拓く運動に身を投じ、互いを磨き合います。「人は人によってしか磨かれない」と青年会議所ではよく言われます。自身を磨き上げる仲間が多ければ多いほど、組織の多様性が増し、新たな考えが吹き込むことで我々の成長は増します。また、多くの人々を惹きつけるためには、常に成長を追い求め、学びを重ねなくてはなりません。我々自身が品格ある青年として、この地域の未来を担う若きリーダーとして一人ひとりがその立ち振る舞いから言動に至るまでより大きく成長していくことが、地域の未来を切り拓いていく人財の学び舎として出雲青年会議所の価値をより一層高めることにもつながっていきます。そのためにも、研鑽を積み重ねることを怠ることなく我々自身を磨き上げることに努め、ともに成長を追い求める新たな仲間を惹きつけ迎え入れましょう。この出雲青年会議所に地域の未来を担う若きリーダーたちが集い、ともに地域の明るい豊かな未来を切り拓く運動に身を投じる中でこそ、人財の学び舎としての真価が発揮されると信じます。ともにさらなる成長を追い求めてまいりましょう。

【厳粛な会議運営と価値の発信】

メンバー一人ひとりの個が集い出雲青年会議所という組織を形作っています。ここに相集うそれぞれの個性が多様な価値観をぶつけ合う中で、各々の議論は磨かれさらに輝くものとなっていきます。この議論こそ出雲青年会議所が誇るものであり、議論を生み出す諸会議こそ青年会議所の本質です。統率の美が醸し出す厳粛な緒会議においてこそ、全体の意識を集中させ、一切の妥協のない核心をついた運動を生むことができるのです。そのような組織だからこそ、それぞれの力を結集し、出雲の発展に力強く取り組み、未来を切り拓いていけるのだと信じます。

近年の情報発信においては、受け手に情報を容易かつリアルタイムで発信することが可能となりました。我々が展開する運動を広く一般に発信することはもちろん、我々が持つ情報の中にも、社会の発展に寄与できるものが大いに含まれています。加えて、出雲青年会議所を発信していくことは、組織のブランディングを高めていくことに必ず結びついていきます。時代の変化を読み、柔軟な発想のもと効果的な情報発信に取り組んでまいりましょう。

時には立ち止まることもある。
しかし、そこには私の手を引いてくれる仲間がいる。
迷っても、遠回りしても、私たちは歩みを進めなければならない。
その一歩が未来へと続く道となる。

「我(われ)がままに」踏み出そう。

宮本 晋吾